みらいメディカルクリニック豊橋|豊橋市下地町長池の泌尿器科、内科、外科、皮膚科

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疾患について

前立腺肥大症

前立腺は男性特有の臓器で、精巣(睾丸)から分泌される男性ホルモン『テストステロン』の影響を受け、次第に大きくなります。前立腺の中央を尿道が通っているため、前立腺の腫大により尿の流れがさまたげられ、排尿困難、頻尿などのさまざまな症状が発生します。
これが、前立腺肥大症と呼ばれる病気であり、高齢の男性がかかることが多い疾患です。
軽度の前立腺肥大症においては、夜間頻尿や残尿感、尿道や会陰部の不快感などの症状が現れてきます。さらに前立腺の腫大が進むと、前立腺部尿道の排尿時の抵抗が増加するため、尿が出にくい、勢いが弱い、尿線が細い、尿が出始めるまでに時間がかかる、排尿が始まってから終わるまでにも時間がかかる、尿の切れが悪いという症状が出てきます。この状態を放置すると、残尿感のみならず、残尿量の増加に伴い尿路感染症を合併し、飲酒や風邪薬の内服により排尿困難となり、尿が出なくなる『尿閉』という状態になることもあります。

診断方法

前立腺肥大症の診断で重要なのは、前立腺がんとの鑑別です。前立腺特異抗原PSAの測定や超音波検査を行い、がんが疑われる場合は前立腺生検を行い、がんを見落とさないことが重要です。昨今では、職場の健康診断や人間ドックでも、PSA検査が含まれていることが多くなってきています。
前立腺肥大症の自覚症状の程度については、『国際前立腺症状スコア(IPSS)』というアンケートを活用されており、患者さんひとりひとりの症状を評価でき、診断や治療方針決定、ならびに治療効果の判定にも有用です。
実際に前立腺がどの様な状態になっているかを調べるには、直腸診と超音波検査、尿流測定、残尿測定、尿道造影などがあります。これらの検査を組み合わせ、前立腺肥大症の状態を診断していきます。

国際前立腺症状スコア(IPSS)はこちら(PDF)

※PDF形式の文書をご覧いただくには、Adobe® Acrobat Reader(無料)が必要です。
お持ちでない方はこちらから入手できます。(外部サイトへ飛びます)

治療方法

一般的には、薬による治療が最初に行われます。前立腺の中を通る尿道を広げて通りを良くしたり、頻尿などの症状を改善させたりする薬が、広く普及しています。いずれも副作用が少なく、他の病気で内服している薬とも併用できる薬が多数開発されており、軽度から中等度までの肥大症に有効です。しかし、前立腺自体を縮小させる効果が無いため、長期間にわたって内服する必要があることや、程度の強い肥大症には効果が不十分なことが多いです。
そこで、内服治療を行っても効果が不十分、尿閉を繰り返す場合などは、手術が適応となってきます。開腹せずに、尿道から内視鏡を入れて行う手術が主流となっています。手術適応の際は、市民病院などへ紹介させていただくこととなります。

日常生活の注意

  1. お酒はほどほどに
    アルコールは前立腺をうっ血させて尿を出にくくさせるので注意が必要です。
  2. 下半身を冷やさない
    下半身を冷やすと、前立腺も寒さによって収縮し尿道を締め付けてしまうため、尿が出にくくなります。
  3. 長時間座ったままの姿勢は避けましょう
    長時間座ったままでいると血液循環が悪くなり下半身に血液が貯留するので前立腺もうっ血し、尿が出にくくなります。
  4. 排尿は我慢しないように
    何度もトイレに行くのがおっくうになってしまったからといって我慢しすぎると尿閉の原因となります
  5. 水分は制限しない
    就寝中や仕事中のトイレ回数を減らそうと飲み水を制限すると腎臓に水分が足らなくなり体内の老廃物を十分に排泄できなくなり、多くの臓器にもダメージを与えてしまいます
  6. 市販薬には気を付けて
    風邪薬や花粉症の薬には、尿を出にくくする成分が含まれている場合があるため、薬剤師さんに相談してから購入してください。また、前立腺肥大症の治療中の方は、病院に受診することをご検討ください。

前立腺炎

前立腺炎とは、何らかの原因で炎症を起こす病気です。前立腺炎は、急性のものか慢性のものか、細菌感染によるものか感染以外によるものかで分類されます。尿道を取り囲む組織に炎症が及ぶため、炎症による激しい痛みだけでなく、尿に関わるさまざまな症状が生じることがあります。
前立腺炎の発症原因の多くは不明です。細菌感染が尿路や血流から前立腺に広がる結果、前立腺炎を起こすことがあります。細菌感染は、徐々に発生して繰り返し起こる傾向をもつこともあれば、急速に発生することもあります。また、細菌感染がなくても慢性前立腺炎を起こすこともあります。
前立腺炎の症状は、原因や発生様式によって異なりますが、典型的には尿路を刺激される症状や会陰部のあたりの痛み(排尿時痛)があります。
急性の細菌性前立腺炎では、感染による炎症の症状が全身に現れて、高熱が出ることもあります。細菌性前立腺炎が原因で、前立腺に膿がたまって膿瘍を生じたり、精巣上体炎になることもあります。

診断方法

前立腺炎の診断では、問診で会陰部の痛みや尿路の刺激症状がみられることを確認した後、前立腺の診察と尿検査を行うことが原則です。特に急性前立腺炎では、前立腺が腫れていて、触れると痛むことがあります。尿の培養検査では、細菌性によるものか非細菌性によるものかの鑑別を行います。

治療方法

前立腺炎の治療は原因によって異なります。

  1. 細菌感染がある場合
    前立腺組織に浸透する抗菌薬を少なくとも2週間服用します。前立腺膿瘍が生じた場合は、通常は外科的な排膿治療が必要となります。
  2. 細菌感染が無い場合
    培養検査で細菌感染が確認できない場合、通常は前立腺炎の完全な快方は困難です。この種の前立腺炎に対する治療の大半では症状が和らぐものの、前立腺炎自体の最終的な改善には至らないことが多くみられます。抗菌薬で非細菌性前立腺炎の症状が軽くなることがあり、また、線肥大症の治療薬により、症状が緩和されることもあります。しかし、長期間に及ぶ投薬治療が必要な場合が多くあります。

日常生活の注意

  1. 長時間のデスクワークを避ける
    前立腺は肛門と陰茎の根本の間の奥にあります。座った状態ではちょうど前立腺が圧迫されてしまいます。時間を決めて休憩を取り、座布団やクッションを利用しましょう。
  2. 自転車の運転に注意
    自転車の利用で振動が直接、前立腺に伝わります。長時間の運転は避け症状の強い時は自転車に乗らないことが良いでしょう。特にロードバイクの長時間運転は危険です。
  3. お酒はほどほどに
    過度な飲酒は前立腺がむくんでしまい、症状が悪化することがあるので控えることで症状が悪化しないようにする助けとなります。

急性膀胱炎

急性膀胱炎は女性の約半数がかかったことがあると言われるほど多い病気です。排尿が終わる時にしみるような痛み、頻尿、残尿感などあることが典型的な症状とされています。

原因

細菌が尿道を通って膀胱で感染すると急性膀胱炎になります。特に女性は男性より尿道が短いため細菌が入りやすく、膀胱炎は女性の病気と考えられています。通常は抗生物質を数日服用すると改善するため、簡単に考えられがちですが、細菌が腎臓に逆流して腎盂腎炎を起こすことや、血尿が出ることもまれではありません。

治療方法

急性膀胱炎の多くは大腸菌が原因となる場合が多いです。しかし、まれに薬が効きにくい細菌が炎症を起こしている場合や別の病気が原因で膀胱炎になっていることがありますので、膀胱炎を短期間で繰り返す場合には専門的な検査が必要となります。

日常生活の注意

  1. 水分を多く摂取する
  2. 身体を冷やさない。特に夏場は冷房の利きが強い場合はひざ掛けなど使用する
  3. トイレを我慢しない
  4. 温水洗浄便座での洗浄は強くすることを好む方もいますが、水流は弱めにしましょう

腎盂腎炎

腎盂腎炎とは、腎盂や腎杯、さらに腎臓の髄質が細菌によって炎症を起こしている状態で、膀胱から細菌が逆流することによって引き起こされる、腎盂および腎臓の感染症のことをいいます。

原因

腎盂腎炎は細菌感染によるものであり、もっとも多い病原菌は大腸菌です。典型的な腎盂腎炎は、膀胱に感染した細菌が、腎臓へ尿管から上行することによって起きます。膀胱炎を発症すると必ず腎盂腎炎になるわけではありませんが、膀胱炎を治療する必要があります。

症状

頻尿があり高熱が出て、感染を起こしている腎臓側の腰腹部に痛みを伴います。また、吐き気や嘔吐を起こすこともまれにあります。

診断方法

尿検査、血液検査、超音波検査を行います。尿検査では、尿中の細菌の有無白血球数を確認し、尿培養検査で原因菌を特定します。血液検査は炎症反応の程度と腎機能を評価します。腎臓は超音波検査で観察しやすい臓器で、腎盂腎炎の場合、腎盂の拡張を確認します。

治療方法

腎盂腎炎の治療の主体は、抗菌薬の投与です。軽度の腎盂腎炎であれば、外来通院で点滴による治療で改善しますが、重症の場合は入院しての治療となることもあります。

日常生活の注意

膀胱炎の場合と同様に、水分を多く摂取しトイレを我慢しない。また、膀胱炎を起こした場合は、早めに受診し治療するようにしましょう。

間質性膀胱炎

間質性膀胱炎とは、頑固な頻尿や、トイレに行ってもすぐに行きたくなる、尿を我慢すると下腹部が痛いなどの症状を来す慢性的な膀胱炎で特に女性に多い病気です。
細菌感染で起こる急性膀胱炎や尿意切迫感を来す過活動膀胱と症状が似ていますが、別の病気です。

症状

典型的な症状としては、尿がたまると膀胱に痛みを感じます。そのため早めにトイレに行っている方も多く、1日に20~30回以上となり日常生活に支障をきたします。
薬を飲んでも頻尿が治らない、膀胱炎が治りにくい、膀胱炎の症状があるにも関わらず尿検査に異常が無い、尿がたまると下腹部が痛い、いつもトイレのことが気になる、性交時にも痛みがあるなどの症状があります。

診断

まず、症状と経過を十分に問診し、尿検査、排尿の勢いや量、残尿量を確認します。他の疾患でないことを確認するためにも、超音波検査や血液検査を行う場合もありますが、最終的には膀胱鏡(内視鏡)検査を行います。膀胱鏡でハンナ病変と呼ばれる特有の病変を認めます。ハンナ病変とは、正常の毛細血管構造を欠く特有の発赤粘膜を言います。

治療方法

麻酔下で、膀胱の中に生理食塩水を注入し、膀胱を水圧でひろげる膀胱水圧拡張術を行います。しかし、施術をしても数カ月で症状が再発することが多いため、繰り返し行うことが必要です。また、認可を受けた病院での治療となるため、連携医療機関へご紹介させていただきます。
薬物による治療では、有効性があるとされている抗アレルギー剤や抗うつ薬などを使用します。

日常生活の注意

  1. 水分を十分取って尿を薄めましょう
  2. こしょう、唐辛子、わさびなどの刺激性の食品を控えるようにしましょう

過活動膀胱

突然トイレに行きたくなる(尿意切迫感)、夜中に何回もトイレに起きる(夜間頻尿)、日中8回以上トイレに行く(昼間頻尿)、トイレまで我慢できずに漏らしてしまう(切迫性尿失禁)などの症状を起こすことが過活動膀胱(OAB)です。
特に女性では、加齢に伴って増加しており、排尿のトラブルは日常生活に影響を与え、生活の質(QOL)を低下させる原因となります。患者さんによっては、「トイレが心配で旅行に行けない」、「漏らしてしまうので外出できない」という方など、外出もできず家の中に引きこもってしまうことも少なくないです。一方で、排尿などの悩みは恥ずかしく、知人に相談もできず、病院へも行けないという方も多くおられます。

原因

膀胱は尿を一時的にためておく臓器で、尿がたまると神経から脳へ信号が伝わり、脳から神経に指令が出て、尿の出口である尿道の周囲にある筋肉を緩め、かつ膀胱の筋肉を縮めることで尿を排尿します。過活動膀胱を発症する原因は脳と膀胱を結ぶ神経のトラブルと、それ以外の原因が考えられます。詳しいメカニズムはよくわかっていませんが、加齢や精神的ストレスによって、神経が膀胱の尿量を感知して脳に伝え、脳から尿道や膀胱の筋肉に「緩めろ」「閉めろ」という命令を伝えるやりとりが、うまくできなくなるからではないかと考えられています。また、それ以外の原因としては、特に女性の場合は加齢や出産によって膀胱、尿道、子宮を支えている骨盤底の筋肉が弱くなって、脳からの命令をうまく実行できないこともあるようです。こうした原因が複合して起こる場合もあると考えられます。

検査、診断

過活動膀胱は症状に基づく病気ですので、自覚症状の評価が重要です。尿意切迫感の症状があれば過活動膀胱と診断されますが、頻尿や切迫性尿失禁を伴っていればよりその可能性があります。最近は、過活動膀胱で受診される方が増えています。過活動膀胱の診断や重症度を評価するための質問票『過活動膀胱症状質問票(OABSS)』を用いて症状を点数化し、軽症、中等症、重症と判断します。
頻尿の症状が出る病気は他にもあるため、超音波による膀胱に残った尿量の検査(残尿検査)、尿検査、必要に応じて尿の流量や尿漏れの量の測定、膀胱の圧力、尿道鏡による検査なども加え、他の病気もチェックした上で、過活動膀胱と診断します。

過活動膀胱症状質問票(OABSS)はこちら(PDF)

※PDF形式の文書をご覧いただくには、Adobe® Acrobat Reader(無料)が必要です。
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治療

過活動膀胱は、まず薬による治療と排尿と関連する骨盤底筋を鍛えるトレーニングがあります。一般的に処方されている薬は抗コリン薬という種類の薬で、これは排尿に関係する筋肉をコントロールする自律神経に作用し、膀胱の過剰な収縮を抑える薬です。また、β3受容体作動薬という新しい種類の薬も出てきました。こちらは膀胱の筋肉を緩める薬です。また、当院では少しでも内服する薬を少なくするために、干渉低周波治療器(ウロマスター)を併用し治療を行っております。症状に合わせ通院回数を決めますが、開始時には頻回に通院してもらうことになります。

骨盤底筋運動

日常生活の注意

  1. 過剰な水分摂取やカフェイン摂取の抑制によって、頻尿、切迫性尿失禁の改善
  2. 肥満や便秘がある方は、ダイエットや排便コントロールにより改善されることもあります

尿路結石

尿路結石とは、腎臓で作られた尿が通る道である、腎盂腎杯、尿管、膀胱、尿道などに石ができることです。
尿路結石の発症には食生活が大きく関係しています。特に日本人の場合はシュウ酸カルシウム結石と呼ばれるものが多く、シュウ酸のとりすぎが結石の主な原因であるといわれています。結石が尿管にひっかかると、尿管の動きとともに激しい脇腹の痛みが生じ、また尿が下流に流れないと上流で尿がたまりよどんでしまうため、尿路感染や腎機能の機能障害などが生じます。

原因

何か一つの原因で起こるわけではなく、尿路の通過障害や食事(動物性タンパク質や脂肪の過剰摂取)、シュウ酸を多く含む食品(ほうれん草、コーヒー、紅茶、コーラ)の過剰摂取に内分泌、代謝異常などさまざまな要因が考えられます。

症状

結石の大きさと症状の重篤さは一致しないことが多い。腎内にある結石の多くは無症状で経過するため、数㎝の大きさまで成長することがある。結石が尿管に落ちると脇腹や下腹部に激しい痛みが生じます。夜間や早朝に起こることが多く、痛みは2~3時間続き、その間は数分おきに痛みが強くなるというように、痛みの強弱に波があるのが特徴です。尿の流れが悪くなることで、腎臓から尿の出口である腎盂、腎杯が腫れて水腎症(腎臓で作られた尿の流れがせき止められて、尿の通り道や腎臓の中に尿がたまって拡張した状態)を発症することがあり、腎機能を低下させる場合もあります。また、結石の刺激に伴って血尿や頻尿の症状が現れるケースもあります。

検査、診断

尿検査で血尿や尿路感染症の有無を確認。CTや超音波(エコー)検査、エックス線検査など腹部の画像検査で結石の部位や大きさ、腎臓の形や機能を調べます。さらに、腎臓が正しく機能しているか調べるため、静脈性尿路造影検査を行うこともあります。

治療方法

症状も閉塞も感染も引き起こさない小さな結石に対しては通常、治療はありません。痛みはあるが結石が大きくない(1㎝未満)場合は、十分な水分摂取と鎮痛剤や結石を出しやすくする薬を使いながら自然に排泄されるのを待ちます。結石が1㎝より大きいなど簡単には体外に出せない場合は、薬物療法だけでなく、体外から衝撃波を与えて結石を砕く「ESWL(体外衝撃波結石破砕術)」、尿道から尿管内に内視鏡を入れて結石を砕く「TUL(経尿道的尿管結石破砕術)」、背中から腎臓に穴を開けて内視鏡を入れて結石を破砕し直接摘出する「PNL(経皮的結石破砕術)」という三つの手術療法から選択、あるいは組み合わせて治療を行います。
また、石により尿が通過できず感染症を起こした場合、特に重症化したときは一時的にカテーテルを留置して尿を排尿したり、尿が流れるためのスペースを作るためにステントを留置する場合もあります。手術が必要な場合は、連携病院へご紹介させていただきます。

日常生活の注意

再発の多い疾患のため、日常生活では水分を十分摂取することとバランスの良い食事が予防法として推奨されています

  1. 水分補給は尿中のミネラル濃度を低くするためにも重要であり、1日あたり2リットルの尿量を保つようにしましょう
  2. 結石は尿中のシュウ酸という物質が固まってできるためシュウ酸を多く含む、ほうれん草、コーヒー、紅茶、コーラなどの摂取を控えることで再発を予防できるといわれているが、極端な制限は栄養バランスの偏りにつながるため好ましくありません
  3. 塩分や糖分、体内で代謝されて尿酸となるプリン体が多く含まれる食品、ビール、動物性のタンパク質をとりすぎないことも重要である
  4. 一度でも尿路結石と診断された方は、定期的に受診し尿検査や超音波検査、エックス線検査を行い、結石の有無を確認することも重要である

前立腺がん

男性だけにある前立腺という生殖器において、細胞ががん化し無秩序に増殖を繰り返してしまうことです。日本においては高齢化社会を背景に、ライフスタイルや食事の変化、検査技術の向上が重なり、年々前立腺がんの患者さんが増加中である。がんが進行するとリンパ節や脊椎、骨盤、大腿骨などの骨に転移しますが、他の腫瘍と比較した場合、進行がゆっくりであることが多いため、早期に発見し治療を行えば、多くの場合通常の暮らしを長く続けることもできます。

原因

決定的な原因は明らかになってはいないが、遺伝や食生活、男性ホルモン、加齢などが関連すると考えられています。特に家族に前立腺がんの患者さんがいる人は、注意が必要です。

症状

一般的には前立腺がんは、いわゆる外線(前立腺の外側)から生じるため、早期には症状が無いのが普通です。最近では、PSA(前立腺特異抗原)検査と呼ばれる前立腺がんの血液腫瘍マーカー検査の普及により、血液検査で見つかる症例がほとんどです。前立腺がんと診断される患者さんの代表的な訴えは、排尿困難(おしっこが出にくい)と、頻尿(おしっこの回数が多い)で、これはむしろ併存する前立腺肥大症の症状であることが多いです。進行した場合には、他のがんと同じように転移しますが、骨への転移が多いことが前立腺がんの特徴です。腰痛などが典型的な症状であり、高齢者の腰痛の原因を詳しく調べた結果、前立腺がんが見つかることもあるのです。

検査、診断

問診後、まずは血液検査であるPSA(前立腺特異抗原)検査を実施。PSAとは前立腺の上皮細胞から分泌されるタンパクのこと。がんの場合、血液中でPSAの値が高くなるため、より良い診断が期待できます。しかし、前立腺肥大や前立腺炎などでもPSAの値が高くなることがあるため、鑑別が必要です。そのため、直腸診や超音波検査などを行いがんの可能性を探っていきます。これらの検査でがんが疑われた場合、前立腺の組織の一部を針で採取して病理検査を行います。前立腺がんの診断がついた場合、CT検査やMRI検査、骨シンチグラフィーなどの画像診断を行い、がんの進行度や転移の有無を確認します。

治療方法

前立腺がんの治療には、治療を行わず経過を見る「PSA監視療法」、完治を目指して行われる「手術療法」「放射線療法」、がんの進行を抑える目的で行われる「ホルモン(内分泌)療法」「化学療法」、進行したがんによる苦痛を取り除く「緩和療法」があります。
低リスクの前立腺がんには非常に進行が遅く、生命に影響を及ぼさないと考えられるものがあり、無治療で経過観察することもできます。前立腺がんが前立腺の中にとどまっていれば、完治を目指す手術療法や放射線療法などの治療を行うことができます。また手術や放射線照射を希望しない方には、がんの進行を抑える治療を行うこともできます。
このように、早期であるほど治療の選択肢が広がるといえます。一方、がんが前立腺の外まで広がっている場合は、完治を目指すことが難しくなり、ホルモン療法や化学療法でがんの進行を抑える治療を行います。
治療方針は、がんの進行度や悪性度、PSA値、患者さんの年齢、健康状態、人生設計、家族の受け入れ態勢など、さまざまな条件を考慮して選択されますが、患者さんの意志が第一に優先されることは言うまでもありません。

男性更年期障害(LOH症候群)

男性の皆さん、のぼせや動悸がする、集中力が続かない、身体がだるい、やる気がしないなど最近、少し調子が悪いなと感じていませんか?それはひょっとしたらLOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)かもしれません。
いわゆる更年期障害ですが、女性特有の病気ではなく、30歳代後半から50歳代の働き盛りの男性にもある病気なのです。男性は女性と異なり、性ホルモンが徐々に減少していくので、その影響も比較的軽い場合が多いようです。しかし、職場での責任や子供の教育問題によるストレスも大きく影響し、身体の不調だけでなく、不眠や全身倦怠感、うつ症状など、心の不調を訴える人も少なくありません。
更年期を迎えた男性にとって、ホルモンの低下は避けられない身体の変化です。ただ、身体の不調は重大な病気のサインである場合もありますので、「最近ちょっと調子が悪いかな」と思われる方は、ぜひ一度ご相談ください。

原因

重度のストレスや環境の変化などで、血液中の男性ホルモン(テストステロン)が急激に減少することによって起こります。男性ホルモンの分泌が急激に減少すると、男性更年期障害(LOH症候群)の症状が顕著に現れやすくなります。また、加齢とともに徐々に男性ホルモンが減少している場合にも、男性更年期障害(LOH症候群)の症状が少しずつ現れてくることがあります。この場合、本当は男性更年期障害(LOH症候群)の症状であるにも関わらず、他の病気であると診断されてしまうこともあります。

症状

症状は大きく身体症状と精神症状に分けられます。身体症状は、朝立ちの消失や勃起不全(ED)といった男性機能の低下がまず挙げられます。ほかにも、のぼせ、多汗、全身倦怠感、筋肉や関節の痛み、頭痛、めまい、耳鳴り、頻尿などの症状や、精神症状としては、不眠、無気力、イライラ、性欲減退、集中力や記憶力の低下などとともにうつ症状が出る場合もあります。
さらに男性更年期障害になると、メタボリック症候群、心筋梗塞、脳梗塞など生活習慣病のリスクが高まることも分かってきました。
以上のように、症状は多岐にわたっており、人によって現れ方はさまざまです。どれをとっても男性更年期障害を知らなければ「年のせいかな?」と思い込んでしまいそうな症状なので、放置して重症化してしまうケースも珍しくありません。

診断

診察では、問診票や男性更年期障害の診断に広く用いられる『AMSスコア』と呼ばれる質問票での評価に加え、血液検査での男性ホルモン(テストステロン)の値を調べます。

AMSスコアはこちら(PDF)

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治療方法

治療は漢方薬やテストステロンの補充療法による治療と生活改善を並行して行っていきます。漢方薬は、テストステロンの増加が期待できる補中益気湯や、症状に応じて八味地黄丸や十全大補湯など使用します。テストステロンの補充療法は、筋肉注射で間隔は患者さんの状態にもよりますが、2~4週間に一度が目安です。作用がはっきり分かる時期には個人差がありますが、1年後には以前の元気な状態に改善する人も多く、2年以内に治療が終了する方も多いです。

日常生活の注意

  1. 食生活を見直しましょう
    身体のベースを作るたんぱく質(肉、魚、卵、牛乳、豆類)をとりましょう。男性ホルモンを増強するといわれるネギ類、ネバネバ食品、アボカドなどの食材も取り入れましょう。
  2. 運動を習慣づけましょう
    適度な運動をしましょう。筋肉を使うことで男性ホルモンが増え、ストレス解消にもなります。30分のウォーキングが始めやすいでしょう。また、スポーツやゲームで適度に競い合いましょう。競い合い、自分を高めようとすることで、男性ホルモンの分泌が盛んになることがわかっています。
  3. 睡眠の質を上げましょう
    睡眠中はリラックスして副交感神経優位となり、男性ホルモンが分泌されます。逆に一晩徹夜すると2、3日は男性ホルモンが下がったままになってしまいます。
  4. ストレスをためないようにしましょう
    生活に張り合いがでるような趣味や生きがいを持ち、ストレスを解消しましょう。